【歯科事務長を採用する際に注意すべき点】③
~「優秀な人材」面接での見分け方~
目次
◆能力のリスク(根本的な能力不足⇒コミュニケーション、実務能力など)
以前のコラムでも書かせていただきましたが、歯科事務長の役割は、歯科医院経営者である院長が抱えている「歯科医師の仕事」「経営者の仕事」「マネージャーの仕事」の負担を少しでも軽くし、院長がやるべき仕事に集中してもらうことです。
これは見方を変えると、歯科事務長は院長しかできない「治療」と「最終的な意思決定」以外の仕事を任される可能性があるということです。つまり、それらの仕事をこなすための幅広いジャンルの知識やスキルを身に付ける必要があるのです。
ですので「事務作業が多少できるから歯科事務長に!」という安易な気持ちで任命・採用しても、院長の仕事は決して楽になりません。その人に教えたり指示する手間が増える分、逆に仕事が大変になります。
◆歯科事務長に必要とされる能力
それでは歯科事務長に必要とされる能力にはどのようなものがあるのでしょうか?一般的なものをいくつか挙げてみたいと思います。
<歯科事務長に必要とされる能力>
①コミュニケーション能力
院長、スタッフ、業者さん、患者さん、誰とも円滑なコミュニケーションが取れる能力。
②洞察力
院長やスタッフのちょっとした変化、院内の問題や課題を鋭い目で見つける能力。
③分析能力
数字や様々な要素から客観的事実をあぶりだし、改善案を導き出せる能力。
④リサーチ能力=検索力
膨大な情報をスクリーニングし医院にとって不要な情報を排除し、有益な情報を集められる能力。
⑤応用力
患者様からのクレーム、スタッフ同士のトラブルなど機転を利かせ臨機応変に対応できる能力。
⑥行動力
新しいアイデアや医院の決定事項を、実際に行動として具体的に進められる能力。
⑦忍耐力
立場上板挟みになることや理不尽なことが起こりがちですが、感情を冷静に保ち行動できる能力。
⑧事務処理能力
院内の各種手続き、行政対応、経理処理、労務管理など事務処理をおこなう能力。
⑨交渉力
患者さんとのトラブル対応、業者さんとの価格交渉など適正な妥協点を見極めて交渉をまとめる能力。
⑩マーケティング能力
集患、リコール、採用など、患者さんの来院を促す仕組みや求職者が集まる仕組みを考え管理できる能力。
ざっとではありますが、実際の現場ではこのような知識やスキルが求められます。とはいえ、上記のような能力をすべて満遍なく高い水準で持ち合わせている人材は、そうそう見つかるものではありません。歯科医院の現場で発生する仕事を実際に経験しながら、ひとつひとつ知識やスキルを身に着けてレベルアップしてもらうというのが現実的な形です。
だからといって、何もスキルを持ち合わせていない人材を最初から歯科事務長に任命してしまうと、先ほども書かせていただきましたが、院長の負担が余計に増え逆効果になります。すべての能力を求める必要はありませんが、医院として最低限これくらいのスキルや知識は持っていて欲しいというラインを決め、採用することをおすすめします。
◆能力をどう見極めるか
それでは具体的にどうやって能力を見極めればよいのか、いくつかポイントをお伝えしたいと思います。
<選考時のポイント>
①求人情報に必要なスキルや能力等の要件を具体的かつ明確に記載する。
②履歴書だけではなく職務経歴書も提出してもらう。
③過去の仕事での成果物や実績を見せてもらう。
④医院見学兼職場体験をしてもらい、仕事ぶりをチェックする。
⑤課題を出してみて、その成果物をチェックする。
<入職後試用期間中のポイント>
①幅広いジャンルの仕事を任せてみて、その実力を試してみる。
②事細かに指示しなくても主体的に動けるかどうか試してみる。
③医院の課題や改善点をレポートさせてみる。
④あえて知らないジャンルの仕事を振ってみて、どう進めていくかチェックしてみる。
◆歯科事務長として「優秀な人材」の特徴
「優秀な人材」の特徴
①計画性がある:スケジュール管理をしっかりできる
②常に冷静である:感情のコントロールが上手
③仕事に丁寧に取り組める
④分析力、洞察力がある:臨機応変に対応できる
⑤コミュニケーション力が高い:スタッフの希望や課題を聞き、良好な人間関係を構築する
⑥人望がある:こまめな気遣いができる。コミュニケーションをしっかり取り信頼関係が構築されている
⑦責任感が強い:仕事への責任感がある
向いていない人の特徴
①客観性がない
②優柔不断
③自分自身のミスを認めない
④冷静でいられず感情の起伏が激しい
⑤説明が下手
面接での見分け方
「優秀な人材」の見極め方は、全てが分かるわけではありませんが、面接時の受け答えに注目する方法があります。
①挨拶
意外と自分から挨拶できない人がいます。
自主性や積極性などが分かります。
②レスポンスの早さ
すぐに答えられない内容だった場合の受け答え。
レスポンスの早さや正確さで、自己管理能力や臨機応変さが分かります。
③受け答え
意思疎通がスムーズに行えるかどうかでコミュニケーション能力を見極められます。
医院内でトラブルが発生した際、スタッフとの意思疎通が出来なければ解決できません。
「優秀な人材」を採用するためには、面接でそれを引き出せる質問を考える必要があります。書類審査だけでは分からず、実際に働いてみないと能力を発揮できない人もいます。仮採用やインターンを取り入れることも一助です。
まとめ
「優秀な人材」を採用するために医院の「優秀な人材とは」何かを言語化し定義することが大切です。
「コミュニケーション能力が高い」「サポートする仕事が好きな人」「業務の処理を正確かつ早くこなせる」などです。
また、人材が活躍できる環境作りも重要です。