なぜ禁止される?歯科医院のビフォーアフター写真と医療広告ガイドライン徹底解説
厚労省の事例解説付き|歯科ホームページにビフォーアフター写真を掲載する際の注意点と、ガイドラインに沿った正しい掲載方法をわかりやすくまとめます。
歯科医院の先生方から「治療の成果を分かりやすく伝えるために、ビフォーアフター写真を載せたい」とご相談をよくいただきます。
ですが、そのまま掲載すると医療広告ガイドライン違反になるケースが非常に多いのが実情です。厚生労働省の最新改正(令和6年9月13日)版ガイドラインでは、前後写真の扱いを明確に定義しており、要件を満たさない掲載は禁止されています。
該当規定は「第3 禁止される広告(1 禁止の対象となる広告の内容)」(項目(7))に示されています。
厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)
目次
医療広告ガイドラインとは?
厚生労働省が定める「医療広告ガイドライン」は、医療機関の広告(ホームページ・SNS・チラシ・看板・リスティング等)に関するルールの総まとめです。目的は、患者さんが誤解・不利益を被らないよう、分かりやすく正確な情報提供を徹底すること。医療法や省令・通知を実務で迷わないように示した運用指針で、ビフォーアフター写真についても必要事項の明示を求めています。
なぜ原則NGなのか(背景)
● 個々の患者さんで結果は異なるため、単純な前後写真だけを並べると受け手が効果を誤認するおそれがある。
● したがって、写真単体の掲載や説明が不十分な掲載は医療広告として認められません(省令禁止事項)。
掲載できる「条件」チェックリスト(これを満たせばOKにできる)
前後写真を広告として扱う場合、写真に付随して次の事項を“同一画面”や“見やすい配置”で明示する必要があります(リンク先に飛ばさない/極端に小さな文字にしない)。
● 治療内容の具体(術式・材料・通院回数や期間等)
● 費用の情報(総額・自費/保険の別・追加費用の可能性 等)
● 主なリスク・副作用(合併症、痛み、腫れ、破折等の可能性)
● 症例の個別情報(例:年齢・主訴・適応など、誤認防止に資する範囲)
● 掲載場所の注意:画像クリックで初めて説明が出る、利点より極端に小さい文字、別ページの奥に説明を置く-といった形式は不可。
上記の考え方は、厚労省の「事例解説書」該当ページ((22)・(23))の改善例で示されています。
厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)
補足:治療効果自体の断定的表現は広告可能事項ではありません。限定解除の対象外の場合、効果をうたう広告としての前後写真は掲載できません。
これが「NG」例/「OK」例(厚労省の図解で確認)
以下の図は、厚労省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」からの引用です。そのまま院内教育・社内チェックにも使える必読資料です。
● NG例:写真のみ/説明が不十分/クリックしないと説明が出ない
● OK例:写真の近くに治療内容・期間・費用・リスク等を詳細かつ個別に明記。
(出典:厚生労働省『医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)』p.29–30)(22)ビフォーアフター写真(省令禁止事項)
※本コラムでは、厚労省資料の図版「(22)ビフォーアフター写真(省令禁止事項)」「(23)複数のビフォーアフター写真(省令禁止事項)」を出典明記のうえ引用掲載します(出典URLは下部「参考資料」へ)。
「出典:厚生労働省『医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)』p.29–30(https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf)」
複数の症例写真をまとめるときの落とし穴
● 複数の治療法・症例を1つの説明枠でまとめるのは不可。
● 症例ごとに必要事項(治療内容・期間回数・費用・リスク等)を個別に明示する。
(事例解説書(23)参照)厚生労働省
ビフォーアフター画像(写真)を掲載するには?
以下の詳細情報を“同一画面内で・十分に読みやすく”明示すれば、広告として掲載可能です。
(リンク先で初めて出る説明や極端に小さい文字は不可)
術前または術後の写真に通常必要とされる情報
①治療内容:術式名、使用材料、通院回数の目安、処置の概要
②治療期間・回数:例)約6か月/10回など
③費用等に関する事項:総額・内訳、保険/自費の別、追加費用の可能性(再診料、検査費、材料差額等)
④主なリスク・副作用:痛み・腫脹・知覚過敏・破折・咬合違和・出血・感染等、想定される不具合
一例(図版掲載)
画像出典:厚生労働省『医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)』p.29–30(https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf)
よくある質問Q&A
Q1. ビフォーアフター写真を載せると必ず違反になりますか?
A. いいえ。治療内容・期間や回数・費用・主なリスクや副作用などを同じ画面内に十分に説明すれば掲載可能です。ただし写真だけや説明不足は違反となります。
Q2. 複数の症例写真をまとめて紹介しても大丈夫ですか?
A. 症例ごとに必要情報を明示する必要があります。複数の写真を一つの説明文でまとめると違反になるため、1症例=1つの説明セットが基本です。
Q3. 患者さんの声や体験談と一緒に載せてもいいですか?
A. 体験談や感想は効果を示唆する広告表現とみなされ、禁止されています。症例紹介とは必ず分けて記載してください。
Q4. SNS(InstagramやFacebook)で写真を出すのは広告にあたりますか?
A. はい。SNS投稿も広告と見なされるため、ホームページと同じルールが適用されます。写真だけの投稿や「リンク先で説明」形式は不可です。
Q5. 「効果には個人差があります」と書けば安心ですか?
A. 注意喚起としては有効ですが、それだけでは不十分です。治療内容・費用・リスクなど具体的な情報を併記することが必須です。
参考資料(公式)
● 出典:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)(令和6年9月13日最終改正)
● 出典:厚生労働省『医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)』
まとめ
ビフォーアフター写真は「出せない」のではなく、「条件を満たさない形では出せない」ものです。
医療広告ガイドラインに違反した場合、保健所や厚労省から指導・改善命令を受けるだけでなく、場合によっては罰則の対象になることもあります。特にホームページやSNSは誰でも閲覧できるため、監視や通報の対象になりやすく、知らないうちに違反しているケースも少なくありません。
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