変更点を知らないまま6月を迎えた歯科医院が損をする理由
令和8年度診療報酬改定、見落としがちな7つのポイント
令和8年(2026年)6月1日、歯科の診療報酬が大幅に改定されました。
本体改定率は令和8・9年度の2年度平均で+3.09%。これは30年ぶりの高水準とも言われる規模です。しかし「点数が上がった」という話だけで安心していると、思わぬところで損をする可能性があります。
改定の中身を正確に把握せずに6月以降も旧来の運用を続けると、算定もれ・算定誤りが発生し、翌月以降のレセプトで返戻や査定を受けるリスクがあります。7月にレセプトが戻ってきてから慌てても、遡及して修正できる範囲には限界があります。
今回は、今次改定で見落とされがちな7つのポイントを整理します。「正しく理解して、正しく算定する」ことが、歯科医院の経営を安定させる最善の近道です。
目次
【ポイント①】施行日は「3月」ではなく「6月」
診療報酬改定は通常4月施行が多いイメージがありますが、令和8年度の歯科診療報酬改定の施行日は2026年6月1日です(薬価等は4月施行)。
「うちはまだ大丈夫」と思っているうちに準備が後回しになり、レセコンの設定変更や院内掲示の更新が間に合わないケースが毎回起きています。改定内容の確認・院内周知・レセコン設定は、施行前に完了させておくことが大前提です。
【ポイント②】歯科疾患管理料の算定要件に「継続的な管理の必要性の説明」が追加
今回の改定で、日常診療で最も頻繁に算定される歯科疾患管理料の取り扱いが変わりました。
これまで初診月は80点、再診月は100点と異なっていた評価点数が一律90点に統一されました。一見シンプルになったように見えますが、要注意なのは算定要件の変化です。新たに「患者に対して、継続的な管理の必要性について説明を行うこと」が明記されました。
「説明した」という記録が診療録に残っていなければ、算定要件を満たしていないと判断されかねません。これは書き忘れやすいポイントです。院内のチェックフローを今一度見直してください。
【ポイント③】「SPT」と「P重防」が統合・改称
長年の運用で定着していたSPT(歯周病安定期治療)とP重防(歯周病重症化予防治療)が、「歯周病継続支援治療」に一本化されました。名称が変わっただけでなく、算定要件・内容ともに整理・再編されています。
疑義解釈でも「令和8年5月末までにSPTまたはP重防を算定し、6月以降に歯周病継続支援治療を開始する場合」の取り扱いが明示されており、移行期の運用には細心の注意が必要です。
特に、これまでSPTとP重防を使い分けてきた医院では、レセコンの設定変更と、スタッフへの算定ルール共有が急務です。
【ポイント④】口腔機能管理料が2段階評価に再編
高齢化社会への対応として注目度が高まっている口腔機能管理ですが、今改定で「口腔機能管理料」が2段階評価に再編されました。
●口腔機能管理料1:90点(改定前60点から増点)
●口腔機能管理料2:50点
検査実施の有無などの条件によって区分が分かれます。どちらの区分を算定すべきかを誤ると、過大算定または算定もれにつながります。算定要件の確認を丁寧に行ってください。
また、旧来の「口腔機能指導加算(+12点)」が廃止され、「口腔機能実地指導料」として46点の独立した区分に新設されました。施設基準の届出(指定研修を修了した歯科衛生士の配置)が必要です。体制が整っている医院は適切に届出・算定することで、正当な評価を受けられます。
【ポイント⑤】光学印象(IOS)の対象範囲が拡大、施設基準の届出が必要
光学印象(口腔内スキャナ)の保険算定対象が、CAD/CAM冠にも拡充されました。デジタル化が進む歯科治療において、今後の重要性はさらに高まることが予想されます。
ただし算定には施設基準の届出が必要です。「歯科補綴治療に係る3年以上の経験を持つ歯科医師の配置」「デジタル印象採得装置の院内保有」などが要件となります。届出なしでの算定は不正請求となりますので、必ず事前に確認してください。
【ポイント⑥】新設「歯科外来物価対応料」の算定には院内掲示が必要
物価高騰への対応として、初診・再診時に「歯科外来物価対応料」が新設されました(初診3点、再診1点。令和9年6月以降は倍増予定)。
届出は不要ですが、算定には院内掲示(物価高騰に対応するための体制整備を行っている旨の掲示)が必要です。また、レセコンのマスタ設定が6月施行分で正しく更新されているかどうかも確認してください。
【ポイント⑦】ベースアップ評価料の「賃上げ実施」が前提条件
今次改定では、歯科衛生士・歯科技工士・受付スタッフなどの賃上げを目的としたベースアップ評価料が拡充されました。算定の大前提として「実際に賃上げを行っていること」が条件です。
評価料を算定しておきながら、スタッフの給与が実際には上がっていない場合は算定要件を満たさないことになります。また、毎年8月の賃金改善実績報告書の提出も求められます。
「算定できるから算定する」ではなく、「実態として賃上げを行っており、その証拠書類が整っている」という状態が必要です。
まとめ:「正しく算定する」が、経営を守る
今回ご紹介した7つのポイントに共通するのは、「変化を正確に把握していないと、損をする(または不正請求になる)」という点です。
診療報酬の算定は、多く取ることが目的ではありません。算定すべきものを正確に算定し、算定すべきでないものを算定しないことが、医院経営の安定と保険医療機関としての信頼につながります。
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よくある質問(FAQ)
歯科医院の院長・スタッフからよく寄せられる質問をまとめました。
Q1 令和8年6月の改定で、うちの医院の収入は増えますか?減りますか?
A 一概には言えません。初診料・再診料・口腔機能管理料など増点された項目がある一方、歯科疾患管理料(再診月)やSPTの一部区分では減点になるケースもあります。医院の患者構成や算定比率によって影響が異なるため、自院の主要算定項目ごとにシミュレーションすることをお勧めします。
Q2 SPTとP重防の統合で、6月から何もしなくても自動的に切り替わりますか?
A 自動では切り替わりません。レセコンの区分コードを「歯周病継続支援治療」に変更する必要があります。旧名称のまま6月以降も算定すると返戻の対象になります。また、口管強の届出状況によっては6月から即算定できないケースもあるため、事前に確認が必要です。
Q3 施設基準の届出は、一度出せばずっと有効ですか?
A 施設基準によって異なります。今次改定では、旧「医療DX推進体制整備加算」や旧「外来後発医薬品使用体制加算」など、経過措置なしで廃止・再編された基準があります。これらは旧届出のまま算定を続けると不正請求になります。また毎年8月に実績報告が必要な基準もあるため、定期的な棚卸しが必要です。
Q4 レセコンメーカーが自動で対応してくれると聞きましたが、それだけで大丈夫ですか?
A レセコンの点数マスタ更新は必要な対応の一部に過ぎません。施設基準の届出・院内掲示の更新・カルテ記載ルールの変更・スタッフへの周知など、レセコンメーカーでは対応できない院内運用の変更が多数あります。「レセコンが更新された=改定対応完了」ではない点にご注意ください。
Q5 改定対応が不安です。どこに相談すればよいですか?
A 歯科医師会や各種セミナーでも情報を得られますが、自院の患者構成・施設基準の状況・スタッフ体制に合わせた個別のアドバイスは、専門のコンサルタントへの相談が最も確実です。インダストリーでは診療報酬の正確な運用をサポートするコンサルティングを提供しています。まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。
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