SPT・P重防の統合で「算定ミス」が急増する?
歯周病継続支援治療への移行で、知っておくべきレセプト対応
令和8年6月から、SPT(歯周病安定期治療)とP重防(歯周病重症化予防治療)が「歯周病継続支援治療」に統合されました。
「名前が変わっただけでしょ」と思っている医院ほど要注意です。点数体系が変わり、旧区分のまま算定すると査定されるリスクがあります。また、20歯未満の患者では旧SPTより点数が下がるケースもあり、収支への影響を把握していない医院も少なくありません。
このコラムでは、移行にあたって実務上押さえておくべきポイントを整理します。
目次
① まず確認:点数はどう変わったか
歯周病継続支援治療の点数は、残存歯数による3区分制になりました。旧SPT・旧P重防との比較は以下のとおりです。
| 歯数区分 | 旧SPT | 旧P重防 | 新:歯周病継続支援治療 | 増減(旧SPT比) |
|---|---|---|---|---|
| 区分1 1〜9歯 | 200点 | 150点 | 170点 | ▲30点 |
| 区分2 10〜19歯 | 250点 | 200点 | 200点 | ▲50点 |
| 区分3 20歯以上 | 350点 | 300点 | 350点 | ±0点 |
| 重症化予防連携強化加算(旧:歯周病ハイリスク患者加算) | +80点 | — | +100点 | +20点 |
20歯未満の患者(区分1・区分2)では、旧SPTと比べて30〜50点の減算になります。毎月SPTを算定している患者が多い医院では、月間収入への影響を一度試算しておくことをお勧めします。
一方、旧P重防から移行する患者は全区分で増点または同点となります。また、重症化予防連携強化加算(旧:歯周病ハイリスク患者加算)は80点→100点に増点されましたが、新たに「医科への情報提供」が要件に加わっています。
⚠ 旧病名・旧区分のまま算定すると返戻になります
・ 「歯周病安定期治療」「歯周病重症化予防治療」という名称は6月以降廃止されています。
・ レセコンの区分コードが旧名称のまま残っていると、6月分のレセプトが返戻の対象になります。
・ 6月診療分のレセプトは7月請求となるため、気づかないまま提出してしまうケースが多発しています。
② 移行で特に注意が必要なケース
■ 口管強(口腔機能管理体制強化加算)の届出がない医院
5月末にSPT・P重防を算定していた患者を6月からすぐに歯周病継続支援治療に移行できるわけではありません。口管強の届出がない医院は、前回実施月の翌月初日から2か月が経過した日以降の算定開始となります(疑義解釈より)。焦って6月から算定すると査定対象になるケースがあります。
■ 重症化予防連携強化加算を算定したい場合
旧「歯周病ハイリスク患者加算」は、医科からの文書提供があれば算定できました。改定後の「重症化予防連携強化加算」は、これに加えて「医科の主治医に治療内容・今後の治療方針等を情報提供すること」が新たに要件となっています。文書・メール・FAXでの報告でも可とされていますが、記録を残す運用を整えることが必要です。
■ 歯周外科をSPT期間中に行う場合
SPT(歯周病継続支援治療)期間中に病状が悪化した場合の対応について、2026年5月版の「歯周病の治療に関する基本的な考え方」では、「歯周基本治療を行う、または必要に応じて歯周外科治療を行う」と整理されています。また、全身疾患・糖尿病・遺伝疾患の状態により歯周病が重症化するおそれのある患者に行う歯周外科は、100/100で算定できる場合が新たに追加されています。
③ 治癒・SPT・再治療の判断基準(改定後)
SPT期間中の患者が「治癒」に至るかどうかの判断基準は、以下のとおりです。この基準を院内で統一しておかないと、本来治癒すべき患者をSPTで算定し続けるリスクや、逆に処置が必要な患者を見落とすリスクが生じます。
| ポケット深さ | 腫脹・発赤・出血 | 移行先 |
|---|---|---|
| 3mm以下 | なし | 治癒(3か月後に再初診) |
| 3mm以下 | あり | 歯周病継続支援治療(SPT) |
| 4mm以上 | なし | 歯周病継続支援治療(SPT) |
| 4mm以上 | あり | 再SRP・LDDS・歯周外科へ移行 |
「治癒」と判断した場合は、3か月後に再初診として扱います。
④ 実務での移行手順:5つのステップ
STEP 1 レセコンの病名・区分コードを確認する
「歯周病安定期治療」「歯周病重症化予防治療」の病名・コードが残っていないか確認。6月以降は「歯周病継続支援治療」のコードで算定する。
STEP 2 患者ごとの歯数区分を把握する
現在SPT・P重防を算定している患者の残存歯数を確認し、新区分(1〜9歯/10〜19歯/20歯以上)での点数をシミュレーションする。
STEP 3 5月末までの算定状況を記録しておく
5月末にSPT・P重防を算定した患者については、口管強の届出状況によって6月の算定開始時期が異なる。疑義解釈の内容を確認したうえで適切に対応する。
STEP 4 カルテ・レセプト記載の切り替えを徹底する
病名は「慢性歯周炎」等のまま継続してよいが、算定区分の名称は「歯周病継続支援治療」に変更する必要がある。スタッフへの周知徹底が不可欠。
STEP 5 重症化予防連携強化加算の要件を確認する
旧「歯周病ハイリスク患者加算」から名称変更し100点に増点。新たに「医科への情報提供」が要件に加わった。旧来の運用のままでは算定できないケースがある。
「名前が変わっただけ」では済まない理由
SPT・P重防の統合は、単なる名称変更ではありません。点数体系の再編、算定要件の追加、移行期のルールと、確認すべき事項が複数あります。
特に毎月のSPT算定患者数が多い医院は、対応が遅れるほど返戻リスクと収支への影響が蓄積します。早めに院内の運用を整えることが、安定した経営への近道です。
自院のSPT移行対応、確認できていますか?
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よくある質問(FAQ)
SPT・P重防の統合について、現場からよく寄せられる質問をまとめました。
Q1 「治癒」と判定した患者は、その後SPTに戻れますか?また再初診はどう扱いますか?
A はい、戻ることができます。治癒と判定した場合は3か月後に再初診として扱います。再初診後に歯周病が再燃した場合は、歯周基本治療から改めて開始し、要件を満たせば再度歯周病継続支援治療(SPT)に移行できます。なお治癒の判断基準は「ポケット3mm以下かつ腫脹・発赤・出血なし」であり、この基準を院内で統一しておかないと、本来治癒すべき患者をSPTで算定し続けるリスクが生じます。
Q2 移行後も「慢性歯周炎」などの旧病名はそのまま使えますか?算定名だけ変えればよいですか?
A はい、病名(傷病名)は「慢性歯周炎」等のまま継続して問題ありません。変更が必要なのは算定区分名です。6月以降のレセプトでは「歯周病安定期治療」「歯周病重症化予防治療」という区分名は使用できず、「歯周病継続支援治療」として記載する必要があります。レセコンの算定コードが旧名称のまま残っていると返戻の原因になるため、設定の確認と変更が必須です。
Q3 重症化予防連携強化加算を算定するための「医科への情報提供」は、どのように行えばよいですか?
A 文書・メール・FAXなど、記録が残る方法であれば形式は問いません。内容としては、歯周病の治療内容と今後の治療方針を医科の主治医に伝えることが求められます。旧「歯周病ハイリスク患者加算」は医科からの文書受領だけが要件でしたが、改定後は歯科側から医科へ情報提供することが新たに追加されています。情報提供の記録はカルテに残しておくことを忘れないようにしてください。
Q4 SPT(歯周病継続支援治療)中に病状が悪化した場合、SRPに戻ることはできますか?
A はい、できます。歯周病継続支援治療(SPT)期間中に病状の悪化が認められた場合は、歯周病検査の結果に基づき、歯周基本治療(SRP等)または歯周外科治療へ移行することができます。令和8年5月版の「歯周病の治療に関する基本的な考え方」では、この流れが明示されています。また、全身疾患・糖尿病・遺伝疾患の状態により歯周病が重症化するおそれのある患者への歯周外科は、100/100での算定が認められるケースが追加されています。
Q5 旧P重防を算定していた患者と旧SPTを算定していた患者で、6月以降の対応は変わりますか?
A 対応手順は同じですが、点数への影響が異なります。どちらの患者も6月以降は「歯周病継続支援治療」として算定します。点数面では、旧P重防から移行する患者は全区分で増点または同点となります。一方、旧SPTから移行する患者は20歯未満(区分1・2)の場合に30〜50点の減算になります。月間のSPT算定患者数が多い医院では、患者ごとの歯数を把握したうえで収支への影響をシミュレーションしておくことをお勧めします。
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